Closed memory
乱暴に連れて来られたのは、古く小さな揚げ屋だった。
その屋敷の一室に放り込まれる。
迫ってくる畳を前に、俺は慌てて受け身をとって、男を睨みつけた。
「ーー騒がないで」
男はそれだけを口にすると、後ろ手で襖を閉める。
二三歩俺に近付いて、腰を下ろした。
「……お前」
ここに来て、初めて男の顔を真っ正面から見た。
男の顔は包帯で隠され、僅かに見える肌の色は、日焼けとはまた違う黒さをしていた。
髪の色も、俺たちとは違い白い。
むしろ月明かりに照らされて、銀色に光って見えた。
こいつ……異人か?
「……日本人……生粋の」
「なっ……」
口には出していない疑問に男が眉一つ動かさずに答えた。
一瞬、動揺する。
まさかこいつ、俺の心を読んだのか?
可笑しい。
そんなはずはない。
自慢じゃないが、俺は思っていることを顔に出すほど素直な奴じゃない。
表情に乏しいと指摘されるほどだ。
なのにこいつは……。