Closed memory
それだけじゃない。
可笑しいのは風貌や容姿、読心術だけじゃない。
今のこいつは、怖いぐらいに隙だらけだ。
まるで俺に、【どうぞ何処からでも自分を自由に斬って下さい】と言っているようなものだ。
舐められてるのか?
「……敵じゃない」
「は……?」
「……味方でもない」
男は静かに視線を落とすと、自分の右腕を差し出した。
その腕もまた、包帯で巻かれている。
「なんだ。どういうつもりだ」
俺の視線を無視して、男はおもむろに包帯を解いていく。
はらり、またはらりと包帯が畳の上に落ちる音が、やけに大きく聞こえた。
そして最後の包帯が畳に落ちると、不気味な刻印が顔を出した。
「これは……」
「……契約の印」
黒い肌に刻まれた刻印は、痛々しかった。
禍々しい。
その言葉が、ピタリと当てはまる。
「契約?……あの奥にいた男としたのか」
男は頷くと、手早く腕に包帯を巻き直した。