Closed memory
なんて奴だ……。
やっぱり角屋にいたあの不気味なほどに美丈夫な男は、只者じゃなかった。
こんな奴を配下に置いているんだから。
そうなれば、やはり
ーー蘭丸の身が危ない。
「……来る」
男は目を閉じたまま、座禅を組んで呟いた。
「……彼の方が、もうすぐ此処に」
鼓動が速まる。
呼吸が乱れて、嫌な汗が背中を流れるのを感じた。
月が雲に覆われて、僅かに部屋に入っていた月明かりが消えた。
部屋が……島原が暗闇で覆われる。
「ーーほら、おいでなさった」
すぐ近くで、人の気配が現れた。
けれど、辺りを見回しても、俺とこの男以外人の姿はない。
ふいに、睡蓮のさらりとした甘い香りが、部屋を包んだ。
「ーーやぁ」
「ーーなっ」
「初めまして、だよねぇ……古宮 京くん?」
「ぁ……っ…」
こいつがーー吉田…稔麿。
吉田は、残酷なまでに綺麗な笑顔で俺の目の前に立っていた。