Closed memory
吉田はまた、はんなりとした笑顔を浮かべて、
「今の俺の気持ち……君なら、分かってくれるよね?」
恐ろしいほどに綺麗な瞳を細めて、口角を歪ませた。
全身に何かが奔った。
喉が渇く。
此奴……想像以上だ。
想像以上に、危険過ぎる。
俺はここにきて漸く、自分に訪れるかもしれない【死】を感じ始めた。
全身から力が抜けて、手にあった短刀が音もなく畳の上に落ちる。
吉田の背後に控えていた男は、素早くそれを拾うと、暗闇に紛れた。
「ーーよかった、分かってくれたみたいで」
吉田はパッと素早く俺から手を離すと、今度は子供のようにあどけない笑顔を見せた。
今の今まで張り詰めていた空気が、一瞬にして弾ける。
「あれ、何してんの?君も早く座りなよ」
どこからともなく座布団を取り出すと、俺に自分の目の前に座るよう勧めるこの男は、本当に吉田なのか。
ついさっきとはまるで別人だった。
「なに?あ、この子なら気にしなくても大丈夫。ちょっと薬を盛っただけだからさ」
もうすぐ目を覚ますはずだよ……と吉田はまた笑った。