Closed memory
「……何が目的だ」
「目的?」
「とぼけるな。俺たちをわざわざこんなところまで連れてきた目的だよ」
何か意味があるはずだ。
蘭丸に薬を盛ってまで、角屋からこんなひと気のないボロ屋に連れてこなければならなかった理由が。
吉田は嗚呼と頷くと、指をパチンと鳴らし、
「簡単に言うとね、引き抜きだよ」
「引き抜き?」
吉田はまた頷くと、急に真剣な顔になった。
「君たちは、こっちに着くべきだ。新選組の属する佐幕派ではなく、俺たち倒幕派にね」
「勝手に決めるな。……そもそもなんで俺たち二人なんだ」
自慢ではないが、沖田先生のもとで剣の修行をしていても、俺の腕は人並み程度。
一番隊には、俺よりも強い先輩たちが多くいた。
蘭丸だって、普段は小姓の仕事や医術の勉強で忙しくて、剣の修行は二の次になっているはず。
まだ新米で、人を殺したことのない俺たちを仲間に引き入れて、こいつら倒幕派に何の得がある?
吉田の腹の中が……見えない。
「そんな怖い顔しないでよ。まだ若いのに眉間の皺なんて刻んでさぁ」
まるで俺の反応を楽しんでいるような吉田の口振りに、俺は自然と拳を握らせた。