Closed memory
「初めてでしたよね、隊務以外の任務は」
ーーご感想は?
真っ直ぐに向けられた沖田先生の視線。
何も隠すことなんてない。
何も知られたくないことなんてない。
それなのに、俺は思わず顔をそらした。
今、沖田先生と顔を合わせたら、情けない自分を曝け出してしまいそうで。
俺は、下唇を硬く噛み締めた。
「……詳細はまた後日、幹部が集まる会合でお話しします。だから」
今は何も触れないで欲しい。
身勝手な俺の我が儘な言い分だと分かっていた。
そんな事を言える立場でも無いことだって分かっている。
それでも、やはり。
触れないで欲しかった。
俺自身、この一夜に何があったのか整理しきれていないのだから。
「そうですか……。京くん、少しだけ私の独り言に付き合ってくれませんかね」
沖田先生は、聞き返す間も与えてはくれなかった。
「京くんも知っていると思いますが私たち新選組はかつて、“壬生浪士組”と名乗っていた時代がありました」
背中を向けた沖田先生の表情は、見えない。
普段は声色から察せられる感情も、今回ばかりは分からなかった。