Closed memory
「当時、壬生浪士組には近藤先生の他にもう一人……筆頭局長がおられました」
俺は僅かに頷いた。
筆頭局長の名は、俺も幾度か聞いたことがある。
京から離れた俺の故郷にも、良くない噂が、あちらこちらから流れ込んできていた。
浪人のように店を脅しては、大金をせしめる。
金が出せなければ、問答無用で店主を殴り、残酷なまでに店を破壊する。
大砲を打ち込んだこともあるらしい。
そしてある時は、ある二人の芸子に言いがかりをつけ、命に従わなかった彼女らの髪を切り落とした。
どこまで本当かなんて分からない。
だけど、故郷まで届くような噂話。
全てが嘘ではないはずだ。
真実が混じっているからこそ、人は面白がり興味を持つ。
そして、人から人へ広がっていく。
「その人の名は……鴨」
風が、木の葉を揺らす。
沖田先生の長い髪も、風に吹かれた。
「芹沢 鴨」
沖田先生の声色は、低かった。
まるで、何かを押さえ込んでいるかのように。