Closed memory
「ーー古宮」
ふと、背後に人の気配を感じたと思うと、いつの間にか俺の目の前に山崎さんが座っていた。
突然の登場に少し驚く俺を尻目に、山崎さんは蘭丸の脈をとる。
そして、小さく息を吐いた。
「……山崎さん」
ーー蘭丸は、いつになったら目が覚めますか
そう続けたかったのに、言葉が出なかった。
「……焦らんことや。
お前がいくら焦ったかて、なるようにしかならん」
「ーー分かって、ます」
山崎さんは最後に蘭丸の顔を覗き込むと、心配そうに眉を寄せた。
やはり、山崎さんにとっても蘭丸は大事な弟分らしい。
共に医術を学ぶ者……それ以上に、蘭丸は山崎さんの心の内に入っているのだろう。
「蘭丸は、きっと怒っていますね」