Closed memory
「…よかった。京が無事で」
なんとか溢れそうになる気持ちを抑えて、微笑む。
布団で隠された俺の両手は、自身の抑制のために硬く握られたまま。
身に爪が食い込んで血が出ても、理性を保つためなら、俺は構わない。
「…っ、蘭丸!!」
「…えっ」
全身に感じる、強い衝撃。
視界が真っ黒になって、頬をくすぐるのは、紛れもなく京の黒髮で…。
京に抱きしめられていると理解するのは、遅くなかった。
「……京、俺の記憶が正しかったら、一応病人の筈なんだけど…俺。」
戸惑いを隠すようにそう言えば、京はより一層強く、俺を抱きしめた。
「…京、ちょっと」
ただでさえ、京は俺より大きくて、鍛えられた身体で、毎日重い木刀を振っている。
そんな京に力の限り抱きしめられたら、俺なんかの骨が無事である筈がない。
ミシミシという骨の軋みに顔を歪めつつも、それほど俺は京に心配をかけすぎたなと少し反省。
やっぱり、俺が京を誰よりも何よりも必要であるように…。
京にとっても俺は、誰よりも何よりも必要な存在であると自惚れていいのだろうか。