Closed memory
全身の大半を覆う包帯。
怪我をしているわけではない。
褐色の肌を隠す為に巻いているに過ぎない。
自分は、この包帯を特に必要とは感じないが、主である男の命なら、従うのが従者の常。
まぁ、刻印を隠せるという利点もあるから、その点では異論はない。
「ねぇ…もう一度見せてよ」
男が、酔いを孕んだ声で言う。
甘美な甘い声は、低く自分の耳に溶け込んでくる。
「……」
目が眩むほどの、色香を男から感じる。
「焦らさないでよ。
全く…どこでそんなのを覚えてきたんだか…。悲しいよ、俺」
一体、なんだと言うんだ。
「諸伏…命令だよ」
今までの主とは、違いすぎる。
正体がつかめない。検討もつかない。
「ーー 二度は言わない…分かるよね」
目の前にいるというのに、いつも煙をつかもうとするのと同じ。
吉田という男が、わからないんだ。
「……御意」