Closed memory

遊郭で、初めて二人に出会ってからというもの、自分に回ってくる任務は、監視役ばかり。


それまでは暗殺が主だったから、疑問がないといえば、嘘になる。


監察は、思いのほか退屈な仕事であると、最近身を持って知ったから。





自分があの夜、監察対象一に言った言葉。


“敵じゃない” “味方でもない”


その言葉は、嘘ではない。


主である吉田が殺せと命じれば、自分は迷いなく二人を手に掛ける。


守れと命じられれば、その逆。


そこに自分の意思はない。


命令は絶対。
主に逆らう従者なんて、この世にはいない。



古宮 京。矢口 蘭丸。
見たところ、他と何も変わらない年相応な男達だ。


新選組という、主とは相容れない組織に組みし、農民上がりの近藤 勇の元で働く変わった集団。


田舎で道場を切り盛りしていれば、厄介な歴史の渦に巻き込まれないでいられたのに。



自らそこに飛び込んでくる近藤たちは、何を求めているのか。


崩壊寸前の徳川に、何が残されていると言うんだ。


黒船が来てからというもの、幕府の本質が明るみに出た。


腰抜けの幕府。
それが、今の幕府の正体さ。


まぁ、政なんて自分には関係ない。
さっきのだって、主から教えられたこと。


その全てが、真実とは言えないだろうけど。


主から教えられたこと全てが、真実。


それが、従者の常というもの。
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