フィアンセはお母さんを殺したヤツ
第一章 全ての始まり

一節 こんにちは 殺人鬼さん、さようなら お母さん

彼はすぐ近くにいた。


トクン…トクン…


鼓動が徐々に早くなって行く。


ドクンドクンドクン


鼓動がうるさい…
外に聞こえそうだ。
その時だった。


ガサガサガサッ!


なにかがいる。

「っ!!」

どうしよう…見つかったら殺されるかもしれない。
お母さんはもう殺されている。そう、あの悪魔に。

「くっ…痛い!」

頭が痛くなってさっきのことが記憶に蘇る。

_______________

冷たく笑う男…泣き叫ぶ母。
そこに私が乱入する。
途端に男とお母さんの視線が私に刺さった。

私を見た母はビックリし、叫ぶ。

「逃げなさい!」

私は目の前の状況が理解できず体が固まってしまう。
ダメだ。逃げたらお母さんが…!

お母さんをおいて逃げるふりをした。

玄関の傘とキッチンのモップ、それとナイフを数本。

武器になりそうな物はそれ意外なにもなかった。


タタタタタタ………カチャ


お母さんの所に戻った時はもう手遅れだった。

部屋の中が真っ赤に染まっていた。


ギィィィィ


私はまた固まった。後ろをゆっくり振り向くと例の男がいた。
ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

逃げたい。だけどお母さんの仇をとらないと。


ズシャッ


気がつくと私はナイフを振り上げて男の体を斬りつけていた。

これぐらいやればもう死んでいるはず…

確認するために一歩、一歩と男に近づいて行く。

すぐ近くまで来た。

私は息を呑んだ。

顔はこの世の物ではないと思うくらい整っていて美しかった。


ガシッ


足を掴まれた。

なんでこいつ生きているの?

開きかけている口をよくみたらサメのように鋭い歯が何本も生えていた。

この人は人間じゃない。

もう一度刺そう。これで終わりになる。

足を振りほどき刺そうとする。

ガシッ

刺す前にまた足を掴まれた。

相手が起き上がる。

ヤバイ!

覚悟して目を閉じる。

……? …なにもおきない。

相手は弱っているようだ。

チャンス!

この真っ赤な部屋から逃げる。

_______________

これが起こったのだ。今さっき。

カサ

!!
自分が置かれている状況を思い出した。

何がでてくるか。

ナイフを持って身構える。

モップは邪魔でさっき捨てた。

もうナイフと自分の運動神経に頼る
しかない。

そう思って何かが出てくるのを待った。


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