ラザガ
「それなりの報酬は用意してます」
「こう見えてもな。金には困ってないんだ。現役の頃に稼いだ金をあちこちに隠しててな。贅沢しなけりゃあ、一生食っていけるくらいの額はある」
「報酬はお金ではありません」タツミは眼鏡を直した。「豊作さん。あなた、いま追われてますよね?」
豊作の口から笑みが消えた。
「何のことだい?」
「あなたは、五年前、殺しの仕事でタブーを犯した。ある殺しの標的であった、ひとりの赤ん坊を救い、破藤グループの信頼を落としてしまった。破藤グループは、タブーを犯したあなたを処刑するため、多くの追手をさしむけた。あなたは追手から逃げるため、いまこうして浮浪者のふりをしてひっそりと暮らしている。そして、その助けた赤ん坊が、その女の子ですね」
「こいつは驚いたな」豊作は笑った。「八乙女研究所といったっけか?どういう組織かは知らんが、諜報の面で素晴らしい働きをしている」
「ありがとうございます」
「それで、そんなおれの状況を踏まえたうえでの、あんたの言う報酬というのは、一体どんなものなのかね?」
「破藤グループを潰してさしあげます」
豊作は、また笑うのをやめた。目つきが鋭くなった。