ラザガ
タツミは迷っていた。
彼女はラザガのパイロットを選ぶ際、三つの条件を課していた。
一つは強靭な肉体と精神を持っていること。
二つめは狂っていること。つまり常識に縛られない価値観を持っていること。
三つめは、死んでも誰も悲しまない人間であること。
ラザガに乗って、戦えば、死ぬ。
まず間違いなく死ぬ。
あの兵器は、まともな人間には乗りこなせない。
九島策郎と、牙倉雄介は、この三つの条件を満たしていた。どちらも、最凶最悪の殺人犯だ。
しかし、この破藤豊作という男はどうなのか?
確かにこの男も、いかれた殺人犯だが、娘を愛する心がある。娘も豊作を愛している。
そのような人間をラザガの戦いという地獄に突き落とすことに、タツミはわずかなためらいを覚えたのだ。
タツミは豊作にたずねた。
「ひとつ聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「ミチちゃん、でしたっけ?過去、依頼があれば、女子供でも、病人でも殺害してきたあなたが、なぜ依頼に背いてまで、この少女を救ったのですか?」
答えによっては、豊作をパイロット候補から外さなければならない。
しかし、豊作の答えはタツミの予想を越えていた。