ラザガ
「ああ?」
策郎は声のしたほうをにらみつけた。
そこには白い仮面をつけた少年、牙倉雄介が、壁にもたれて腕組みをしていた。
「誰だてめえ?」
「あなたみたいな下品で汚いひとには、名乗りたくありませんね」
拳が飛んできた。
雄介は頭を少しだけ動かしてそれをかわす。
策郎の拳はコンクリートの壁にめりこんだ。
「やめなさい!」
タツミが叫んだ。
「やめられねえなあ。所長さんよお。だっていまのおれ、どうだい?こいつを殴ろうとしたら、あっさりよけられちまった。これはださいよなあ?ださい。すげえださい。駄目なんだよ。ださいのは駄目なんだ。おれは格好よくないと。そのためには、こいつを殺さないとよ」
雄介の仮面に額がつきそうなくらい、策郎は顔を近付けた。目がすでに血走っている。
それを見ても、雄介はまったく動じない。
「噂以上の単細胞ですね。素材としては劣悪だ。まあ、いいですよ。お望みならば、僕が美しく『演出』してあげましょう」
雄介の姿がふっと消えた。