ラザガ
「よそ見していていいんですか?」
雄介の声がまた違う方向から響いた。
ナイフが十本飛んできた。
「うおっ!?」
策郎はあわてて構えた。
拳を振りかざし、七本は叩き落とせたが、三本腕に刺さってしまった。
策郎は舌打ちをもらし、急いでそれを抜く。血が滴り落ちる。
雄介の、笑い声が響く。
「さっきまでの威勢はどうしたんですか?あなた、それでもラザガのパイロットですか?こっちはちょっとからかってあげてるつもりなんですから。こんなのでてこずっているようでしたら、これからの戦いで生きぬいていけませんよ」
「もういいや。面倒くせえ」
策郎はため息をついた。
「なんですか?降参ですか?」
「できれば直に殴りたかったんだけどなあ。おまえが何か小細工を使ってるってのはわかるんだけどよ。それを解くのが面倒臭くなった。もう、いいや」
「何をブツブツと……」
「もう終わらせるって言ってんだよ。声が聞こえるってことはよ。おまえ、この格納庫のどっかにいるんだろ?それがわかれば充分だ」
「何を言っているんですか?」
雄介の声にとまどいがまじる。
策郎は背にしている貨物ケースを開けた。
そして中からロケットランチャーを二挺取り出すと、それを両手に構えた。
「この格納庫を全部ぶっ壊す。そうすりゃ、おまえも死ぬだろ?」
「なっ!?」
策郎は何のためらいもなく、引き金に指をかけた。