ラザガ


タツミに案内されて、三人は格納庫の地下へ降りていった。


暗闇の中、奈落の底へ続いていそうな長い螺旋階段をくだってゆく。それぞれの足音が、長く反響する。


「そういえばよ。兵器の名前の、ラザガってどういう意味なんだ?」


ふと気になって策郎が聞いた。
タツミは笑みを浮かべて答えた。


「いい質問ね。ラザガというのは、ある昔の剣豪が残した言葉よ。漢字で『羅残我』と書くわ。意味はこうよ。『修羅の如く 残酷に 我を貫く』。私はこの言葉が気にいっててね。開発に成功した、凄まじい新兵器の名前につけることにしたの」


タツミとパイロット達は、地下にたどりついた。
見渡す程の広大な空間が、そこに広がっていた。
床も、天井も、壁も、黒い鋼鉄でできている。


三つの滑走路があった。
その発進位置に、三台の機体が並んでいた。


巨大な戦闘機だ。
一台の全長が、五十メートルはある。
それぞれ色が違っていた。
赤茶色、青銅色、黄土色、と三種類。


「これが、ラザガ……」


雄介が圧倒されたようにつぶやく。


「こんなでけえのが本当に飛ぶのかよ」


豊作が眉間にしわをよせる。


策郎は、妙な既視感に襲われていた。赤茶色の機体。その色を、どこかで見たような気がするのだ。


タツミは三人に言った。
「さて、早速出撃してもらうわよ。敵はもうすぐそこに迫っているわ」
そして三人は、それぞれ自分に与えられた機体の方へ向かって走り出した。


策郎が乗るのは赤茶色の機体。
名前は『修羅号』


雄介が乗るのは青銅色の機体。
名前は『残酷号』


豊作が乗るのは黄土色の機体。
名前は『我王号』


三人は操縦席に乗り込んだ。





< 26 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop