ラザガ


策郎は思わずそんな錯覚を抱いた。




発進した途端、凄まじい重圧が全身に襲いかかってきた。
操縦駻から手が離れ、後頭部を座席に叩きつけられた。


「がっ………がが………………がっ………」


体が動かない。まるで象に踏み潰されているかのような、激しい重力が策郎の体を座席に押しつける。


ふざけんな。なんだこれは?ふざけんな。ふざけんなっ!


「がっ……ががががっ………、がああああああああああああっ!!」


雄叫びをあげ、策郎は全身に全力をこめた。重力に逆らい、体を少しずつ前に倒し、操縦駻をひっつかむ。


策郎は思った。
これは乗り物じゃない。
暴れまわるとんでもない化け物の背中に、しがみついているようなものだ。


歯を喰いしばり、全力を込めつづけながら、操縦駻を動かす。
外部カメラのモニターを横目で見て、機体の現在位置を確認する。


「……なっ?」


策郎は絶句した。


モニターに映る機体の下の光景。
そこには、日本列島が小さく見えていた。それどころか、アジア大陸が、地平線の丸みまでが確認できた。
つまり、いま修羅号は、見下ろした光景がそう見えるほどの高さを飛んでいることになる。


マジかよ?発進してから三十秒もたってないぞ。どれだけデタラメなんだ?ラザガってのは?


策郎が呆然とした瞬間。


修羅号は大気圏に突入した。







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