ラザガ
「修羅号、宇宙へ行きました」
「何やってんのよ、あの馬鹿はぁぁっ!?」
オペレーターの言葉に、タツミはぶち切れた。
座っていた椅子を思いきり蹴り飛ばす。
ここは八乙女研究所の防衛管理制御室。
八乙女研究所の防衛システムをここで管理している。
白衣を着たオペレーター達が、たくさんのモニターに向かい、発進したラザガマシン三機と、接近する人面手首の様子を監視している。
タツミはため息をつくと、椅子を立てて座りなおした。
「それで、残酷号と我王号の様子は?」
「はい、残酷号は無事に発進し、現在、敵巨大生命体の目視可能な距離上空を飛行しています」
「我王号も同様です」
「おかしいわね。なんで策郎だけ操縦ミスを犯したのかしら?」
「発進時の強い重力に動揺したのでは?」
「そんな……。発進時のGに関しては、渡した操縦マニュアルに書いていたはずよ。あれを読んでいたなら、心の準備はできていたはず」
タツミは知らなかった。
策郎は確かに、操縦マニュアルに目を通していた。しかし、重力については知ることはできなかった。
九島策郎は漢字が読めないのである。
だから、平仮名の部分だけを読んでいた。当然内容を理解しているわけがなく。
策郎はいま操縦シュミレーションでの練習の経験だけで、操縦に臨んでいるのだ。
タツミは通信モニター越しに、二人のパイロットに話しかけた。
「牙倉雄介、破藤豊作、聞こえたかしら?修羅号は、何を血迷ったか、宇宙に突入していったわ。すぐに呼び戻すから、それまで、その化け物を足止めしていてちょうだい」