ラザガ
我王号を空中で静止させると、豊作は外部モニター越しに、人面手首を見下ろした。
「うるせえなあ、くそ。鼓膜がつぶれそうだ。さて、あんなものをどうやって足止めするかな。……あれ、普通じゃねえぞ」
そのとき、通信モニターから笑い声が聞こえてきた。
「ひひひっ、ひひひひひっ………」
「お、生きてたか。雄介」
残酷号は、地面に突き刺さっていた。
操縦席に乗った雄介は、人面手首が映る外部モニターにへばりついていた。
さっきの衝撃で顔を怪我したらしく、仮面の両目の穴から血を流している。
「ひひっ、ひひひひひっ、なんだあれ?大きな手首の化け物?あんなのが、あんなのが本当にいるなんて……」
「………おーい、雄介。どうした?恐怖で頭おかしくなったか?」
「違います。わくわくしてるんですよ。ねえ、破藤豊作さん、あれの内臓って、どうなってるんですかね?どこを切ったら、腸がはみだすんですかね?心臓はひとつですかね?血は赤いんでしょうか?かわいい赤ん坊のような声ですね。あれの悲鳴ってどんなのですかね?ひひひひひひはあぁぁぁっ!!楽しみだ楽しみだ楽しみだぁぁぁっ!!」
雄介は操縦捍を握った。
そして叫ぶ。
「豊作さん、一緒にあれを『演出』しましょうよ!行くぜぇっ!残酷号!発進!」
雄介はアクセルを踏みつけた。
地面の土をえぐり飛ばし、残酷号は勢いよく飛びたった。
「やれやれ、若い奴はいいな。好奇心旺盛で。じゃあ、おれも行くか」
豊作も操縦捍を握りしめ、我王号を人面手首に向ける。
戦いが、始まった。