ラザガ
そこで目がさめた。
策郎は、全身に包帯を巻いた姿で、ベッドの上に寝かされていた。
まわりを見た。
白い、何もない部屋だった。
壁に頑丈そうなドアがひとつ。
天井の四隅に、監視カメラがひとつずつ。
策郎は、ベッドから降りた。
ふと、右足に違和感を感じた。
右足が、少し重い。
ふくらはぎをつかんでみると、皮膚と肉の奥に、何か固い感触があるのがわかった。まるで、金属が詰まっているかのような……。
「あれ、そういえば、おれの右足……」
そのとき、部屋のドアが開いて、ひとりの女が入ってきた。
三十代くらいの眼鏡をかけた女だ。赤いスーツと長いスカートの上に、白衣を身につけている。妙に、肉感的な女だった。
その顔には見覚えがあった。
「おはよう、九島策郎。体の調子はどうかしら?」
その女、八乙女タツミは、笑みを浮かべながらそう言った。