ラザガ
「誰だ、てめえ?」
策郎はタツミをにらみつけた。
「自己紹介してなかったかしら?わたしの名前は八乙女タツミ。ここ、八乙女研究所の所長をしてるわ」
「八乙女研究所?」
「そう。異次元から発見した特殊高エネルギー体、ジュオームの活用法について、長年研究を続けているの」
「その研究所に、なぜおれがいる?」
「察しが悪いわね。熊に襲われて、死にそうになってたところを助けてあげたんじゃない」
思い出した。
策郎は、右足を見た。
熊に食いちぎられたはずの右足が、元にもどっている。
いや、違う。これは、おれに足じゃない。
「何だこの足は?」
「サイボーグ手術によって作り出した、義足よ。ちゃんとあなたの肉体の神経信号に反応して動くように設定してあるから、ほとんど普通の人間の足と変わらないわ」
策郎は右足を動かしてみた。確かに自分の意思で自由に動かせる。しかし、ぎこちない。自分の本物の右足が持っていた、力強さがない。
舌打ちをもらして、策郎は質問を続けた。
「で、なんでおれを助けた?おれの名前を知ってるってことは、おれがどういう人間なのかも知ってるんだろ?」