ラザガ
太陽が増えた、と策郎は思った。
突然、空に浮かぶ少年、ルークスの遥か頭上に、巨大な光球が現れたのだ。
青白い、禍禍しい輝きを放つ光球だった。表面で、光が海のように波打っている。
「あれは………まさか、そんなまさか!……………あの大災害の原因が、あいつだったとというの!…………まずいわ!三人共!逃げて!」 タツミが、青ざめた顔で通信モニター越しに叫んだ。「あれは絶体喰らったら駄目!早くここから離脱して!」
策郎が言い返す。
「おい、ちよっと待てよ。せっかく敵の親玉が目の前にいるってえのに、逃げろってのか?」
「お願いっ!」
タツミは土下座した。
策郎は面喰らった。
「ラザガだけは!いまラザガだけは失うわけにはいかないの!お願いします!逃げてください!」
雄介が聞いた。
「でも、ぼく達が逃げたら、誰があれから八乙女研究所を守るんですか?」
「……………」
「おい、ミチは?ミチはまだそこにいるのか?」
豊作があわてて怒鳴る。
「ミチちゃんなら、人面手首の接近を察知した時に、ここから避難させています。いま、トラックで八乙女研究所第三支部へ向かっています。あなた達もここを離脱したら、そこへ向かってください。場所のデータはそちらへすぐに送ります」
「タツミ……」
策郎が言いかけた時、物凄い高熱が降り注いできた。
周囲の木々がひとりでに音もなく燃え出し、青い炎が広がってゆく。
異様な大きさにまで膨張した光球が、まるで本物の太陽のように、信じられない熱を放っていた。
「熱っ!……くそ、やべえなあれは……。おい、策郎!雄介!離脱するぞ!」
「はい!」
我王号と残酷号は、すぐに飛び去っていった。
策郎は、八乙女研究所をちらりと見下ろすと、アクセルを踏んだ。
修羅号も飛び去ってゆく。
それを横目で見ながら、ルークスはテレパシーで言葉を発する。
あれはまだ殺しません。いまぼくが殺したいのは、八乙女、あなたです。ぼく達にジュオームぶちこんだ、あなた達一族だけは、許せない。喰らえ……
デス・サン(死の太陽)