ラザガ
ルークスはいまでも、あの時のことは、しっかりと覚えている。
産まれてから、まったくいいことの無い人生だった。
物心ついた頃から、売られて、買われて、もてあそばれて、売られて、買われて、もてあそばれて……。その繰り返しだった。
自殺する気力すら沸かず、流されるがままに生きてきた。
八乙女研究所に売られた時は、なにがなんだかよく分からなかった。
到着すると、すぐに固いベッドに寝かされ、麻酔を打たれて意識を失った。
そのあと、どれくらいの時間がたったか分からず。
気がつくと、裸の姿で、広い鋼鉄の部屋の中に立っていた。
体が、ずきんと痛んだ。
見ると、全身のあちらこちらに縫い目があった。所々、少し膨らんでいる。
何かを体内に埋め込まれている、と分かった。気持ちが悪くなった。
周りを見ると、同じように、裸の姿の子供が三人いた。
自分より、年上の男のひと、年下の女の子、そして、赤ん坊。
彼等の体にも、たくさんの縫い目があった。
何がどうなっているのかは分からないが、彼等と自分は、いま同じ境遇にあるとなんとなく理解できた。
そのとき、壁につけられたスピーカーから、老人の声が響いた。
「おはよう、諸君!よく眠れたかね?」
四人はぼんやりと、スピーカーを見上げた。
「わしの名前はドルイド八乙女!よろしく!さて、いまから君達には試練を与えよう!辛い試練だが、これはチャンス!そう、進化という名のチャーンスなのだ!これを乗りこえれば、君達は神にも悪魔にもなれる素晴らしい力を得ることができるだろう!そうすれば、君達は、いままでの暗いしみったれた人生からグッバイすることができる!だからぜひぜひ!がんばってみてくれたまえ!」
スピーカーから声が途切れた。
すると、天井についていた、何か巨大なお椀型の機械から、凄まじく眩しい光が放たれた。
その光に触れた瞬間、ルークスは絶叫した。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」