ラザガ


痛みが止まった。


ルークスは、自分の体を見下ろした。
表面上は、ほとんど、人間の体と変わらなかった。
さっきまで、全身にあった縫い目が無くなっていた。髪が真っ白になっていた。
体内では、凄まじい力が満ちていた。


周りを見渡して、ルークスは、眉をひそめた。


目の前に、巨大な化け物がいた。それは手首の形をしていた。手の甲のあたりに、巨大な赤子の顔が張り付いていた。泣いていた。
それは、ルークスと一緒に、実験室に閉じ込められていた赤ん坊のものだった。名前は、確かヘンリーといったか。


「これは、どうなっているんだい?」


ルークスは自分の胸に向かって聞いた。それに答えるかのように、胸が青く輝いた。ジュオームがルークスに向かって語ったのだ。ルークスはうなずいた。


「そうか。彼等もうまくジュオームとひとつになれたんだね。でも、人間の形のままだと、それに耐えられないから、体を異形のものに、進化させなければならなかった。それで、こんな姿になったのか」


もう一度、周りを見ると、リリーという少女も、トムという少年も、巨大な化け物の姿に「進化」していた。


「そうか。ぼくが人間の形をとどめているのは、すごい奇跡なんだね」


胸の中のジュオームが聞いた。


これからどうしたい?


ルークスは上を向いて答えた。


「殺したい」


誰を?


「ぼくをいままで苦しめてきた奴らを、全員」


じゃあ、探しにいこうか?

「いや、その必要は無いよ。奴らはみんな、このアメリカに住んでいるはずだ。それさえ分かれば十分だ。ここにいながら、殺すことができる」


……なるほどね。あれを使うのか。



いまのルークスには、大量のジュオームエネルギーを自由に制御できる能力が身についていた。


ルークスは、上に向かって両腕を掲げた。
そして、ジュオームの力を掌に溜め、つぶやいた。



「デス・サン」








< 63 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop