ラザガ


「誰だ?」


豊作が聞いた。


「わたしの名前は八乙女由美。あなたがいま持ち上げている八乙女竜児の妹です。ここ、八乙女研究所第三支部の、医療班の班長を勤めています。主に、サイボーグ手術について研究しています」


信じられなかった。
どう見ても、普通の女子高生だ。その顔つきは、まだ幼さを残していて、とてもそんな重要な役職についているとは思えなかった。


三人のとまどいを感じとったのか、竜児が言った。


「本当だ!由美は、若干十七歳にして医療班の班長だ!その卓越したサイボーグ技術で、数々の重傷を負った兵士を治してきた!どうだ!八乙女の一族はすごいだろう!えっへん!……ぶげっ」


豊作は竜児を投げ捨てると、由美を見下ろした。


「どういうことだ?ミチがまだ着いてないだと?」


由美は、豊作の巨体におびえた様子をみせながらも、ゆっくりと答えた。


「何てことはありません。あなた達が、早く到着しただけのことです。あなた達は、あのラザガマシンに乗ってきたのでしょう?先に出発していた輸送車をあっというまに追いぬいて、先に琵琶湖に着いちゃったんですよ」


「……そうだったのか」


「数分前に、輸送車から通信が入っていました。いまは、東京都を走っているそうです。あわてなくても、今日中には、ここに着きますよ」


「ミチは無事なのか!?」


「はい、車内でおとなしくしているそうです」


「……そうか」


豊作は、肩の力を抜いた。




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