ラザガ
「なあ、あんた」
策郎が軽い口調で由美に話しかけた。
由美は顔を赤くし、背筋をぴんと伸ばした。
「は、はい!なんでしょう?」
「あんた、そのサイボーグ手術ってのが専門なのか?」
「はい、策郎さんの右足の手術も、わ、わたしがやりました」
「あ、そうだったのか。ありがとな。それで、ちょいと聞きたいんだけどさ、あんたのそのサイボーグ手術の腕ってのは、どれ程のもんなんだ?」
由美はけげんそうな表情を浮かべた。
「どれ程……といいますと?」
「いや、ほら、例えばさ、死にかけている人間は治せるのか?」
「病気や老衰なんかはサイボーグ手術では、どうにもなりませんけど、怪我による瀕死なら多少の重傷でも治せる自信はあります」
「おい、策郎。おまえ、何を聞いてんだ?」
話に入ろうとする豊作を手で制し、策郎は質問を続けた。
「じゃあさ、死んだ人間の蘇生とかは?」
由美はとまどいながらも、考えて、ゆっくりと答えた。
「死後、そんなに時間がたっていなければ、わたしが作った独自の心臓ショックマシンがありますから。蘇生は不可能ではありません。例えその時、体が破損していても、あらゆる部位のサイボーグ人体パーツを用意していますから。大丈夫です。何しろ、相手はあのジュオームチルドレン。とんでもない化け物ですから。どんな凄まじいダメージを負うかわかりません。ですから、医療設備も、それなりのものを準備しています」
「そうか、よっしゃ、それを聞いて安心した」
策郎はにっこりと笑った。
「おい、策郎……」
豊作が質問の意図をたずねようとした時だ。
策郎が飛んだ。
そして、宙で回転し、隣に立っていた雄介に素早く蹴りを叩きこんだ。
「がっ!?」
完全に虚をつかれた雄介は、あっさりと吹き飛び、壁に衝突し、床に倒れた。