ラザガ
策郎はそれに駆け寄ると、雄介の髪を掴み、雄介の体を窓際までひきずった。
そして、雄介の頭を持ち上げ、窓ガラスに思いきりぶつけた。
防弾仕様のはずの窓ガラスが、派手な音を立てて砕けた。破片が飛び散る。外から強い風が、室内に向かって吹きつけてくる。
人面手首ヘンリーと戦った時の傷が開いて、雄介の仮面と顔の隙間から、血が流れだした。
策郎は、まだ混乱している雄介の耳元に、早口で囁いた。
「さっきの戦いの話の続きだ。おめえ、あれはねえだろ。あれはだせえよ。だせえんだよ。だせえよ。だせえよ。だせえよ、だせえよ、だせえよ、だせえよ、だせえよだせえよだせえよだせえよ。糞ださくてしょうがねえんだよ。おれはな、ださいってのが死ぬほど嫌いなんだ。そんなおれにあんなだせえもんをよくも見せてくれたな。………………………おまえ、一度死んでこい」
策郎は、割れた窓硝子に開いた大きな穴から、雄介の体を外に投げ捨てた。
雄介の体は落下していった。
この所長室は、塔の二十階である。
二十階の高さから、策郎は雄介を投げ捨てたのである。
策郎は室内を振り向くと、笑いながら由美に向かって、言った。
「ふう、少しはすっきりした。じゃあ、八乙女由美博士。あいつの死体を拾ってちゃっちゃと蘇生してくれや。一応パイロットとして必要だからな。たぶん地面の上でグシャグシャになってるだろうけど、サイボーグ手術なら大丈夫なんだろ?」
由美は何も答えられなかった。目を見開き、膝をついて、震えていた。
「策郎……、おまえ、ふざけんなよ……。なんで……、こんな……」
豊作がうめく。
「なんでって、おっさん決まってんだろ?」平然としている。「ださいからだよ」
「ださいって……、おまえ」
「雄介のやつ、調子に乗ってださいことしやがるからさ。一度殺すことにした。そうすれば、あいつも少しは反省するだろ?」
「殺すことにしたって、おまえ蘇生できなかったらどうすんだ!」
「別に死んでもいいよ。あんなヤツ」
豊作は頭を抱えて溜め息をついた。
こいつ、全然変わってない。あいかわらず、感情だけで突っ走って、とんでもないことをしやがる。
破藤グループで、無茶な殺しを繰り返していた頃と、全然変わってない。
竜児だけが、腹をかかえて大声で笑っていた。
「うええええっ、えへへへへへっ!!こいつ、マジかよ!!ひゃははははははははっ!!イカレてやがる!!さっすがっ、ラザガのパイロット!!面白れ!面白れ!」