ラザガ
そのときナイフが飛んできて、策郎の尻に刺さった。
「痛えっ!」
策郎は思いきりのけぞった。
そして、振り向き、眉間にしわをよせたた。
窓際に、雄介が立っていた。両手にナイフを持って、こちらをにらんでいる。
さっき落下した際、雄介は即座に懐からナイフを取りだして、それを塔の壁に突き刺した。
そして、そのままナイフにぶらさがる形になり、落下を逃れた。
「……あの野郎」
雄介は切れた。
そして、懐からもう一本ナイフを取りだし、それも、壁に突き刺した。
そうして、二本のナイフを上に向かって交互に抜き刺ししながら、すごい速さで壁を登っていった。
「しぶといな。そのしぶとさ、結構かっこいいじゃん」
策郎は尻からナイフを抜きながら笑った。
雄介は無言でナイフを投げた。策郎の顔面に向かって、刃が迫る。
策郎はそれをわざと歯で噛んで受け止めた。そのまま笑いながら歯に力をこめ、ナイフの刃をねじまげる。
ぺっとナイフを吐き捨て、策郎はかまえた。
「おとなしく落ちてりゃ、よかったのによ。おれとやりあうのは、二十階の高さから落ちるより痛えぞ」
雄介も、ぶつぶつと呟きながらナイフをかまえた。
「……もういい。もういいです。世界なんてどうでもいい。ラザガなんてどうでもいい。九島策郎、とにかくおまえを惨殺できれば、もう何もかもどうでもいい」
「今度は格納庫の時みてえにはいかねえぞ。隠れるとこはねえからな」
「だから何だというのです?近距離戦なら僕に勝てると?はっ、…………なめんじゃねえぞコラァァァァっ!!」
戦いが始まった。
血が舞った。
血が舞った。
壁が砕けた。
テーブルが割れた。
部屋に転がっていた銃のいくつかを策郎が蹴りとばし、暴発して爆発した。
それが転がっていた火薬に引火し、部屋は火事になった。
血が舞った。
血が舞った。
天井に穴が開いた。
電灯が割れ、破片が降り注いだ。
殴る音。蹴る音。切る音。骨が折れる音。
策郎の雄叫び。
雄介の怒鳴り声。