ラザガ
「……首都だと?」
重い声が響いた。
由美が見上げると、豊作が物凄い形相で両拳を握りしめていた。
「おい、由美、おまえ、さっきミチを乗せた輸送車はどこを走っていると言った?」
「え?それは……、東京……。ああっ!!」
由美も気付いた。
ジュオームチルドレンが今、首都、つまり東京を襲撃している。
豊作の娘、ミチを乗せた輸送車は、今東京を走っている。
ミチが危ない。
由美が理解した直後、轟音がふたつ、響いた。
すると、部屋が急に静かになった。
策郎と雄介の争う音がぴたりとやんでいる。
由美は部屋を見渡し、絶句した。
策郎が壁にめりこんで気絶していた。
雄介も、天井にめりこんで気絶していた。
部屋の中心に豊作が立っていた。
豊作が、二人を殴り飛ばしたのだ。
まったく見えなかった。
策郎や雄介が戦っているときの動きも、早くてほとんど分からなかったが、豊作の動きは別格だった。
竜児も、呆然としている。
「これが、破藤グループ社長、破藤豊作の実力……」
由美はごくりと喉を鳴らした。
豊作は、めりこんでいる策郎と雄介の体を引き抜いた。そして気絶している二人を両肩にかつぎ、竜児と由美をにらんで叫んだ。
「ラザガ!!出撃するぞ!!さっさと準備しろ!!」