恋?未満
6月
 同じ雑居ビルに、

偶々彼女の会社が引っ越してきた6月の始め。

俺は、経営する司法書士事務所の引越し先の物件を探していた。

8月末には、もう少し安い賃料の物件を見つけないと、

そろそろやばい状況だ。

駐車場を見降ろせる非常階段に置いた灰皿。

それに煙草を押しつけて

そんな事を考えていたら、

1台のバイクが駐車場に入ってきた。

大きな溜息とともに聞こえてきた

階段を上がってくる足音に、

ちらっと見れば全身黒い服を着た少年。

「お疲れ様です。」

そう言って返事も聞かず、ビル内に入って行き、

事務所の前でドアを開けながら非常階段側を見ると、

先程の少年が、引っ越してきたばかりの事務所のドアに

消えて行くところだった。

たしかあそこはモデル事務所だったはず。

あの少年もモデルだろうか?
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