恋?未満
7月
暫らく、例のいい女に会えない日が続いていた。

一段落終え煙草を吸おうと、廊下に出ると、

非常階段のドアを開ける後ろ姿が目に入る。

癖のある漆黒のショートヘア。

黒いタイトなパーカーと黒のスキニーをはいた肢体は、

華奢で、細くて長い手足と細い腰、小さな臀部の少女。

モデルさんかな?

足早に非常階段に向かうと、

駐車場からバイクのエンジン音。

見ると、いつか見た少年が乗っていたバイクとメット。

少年ではなく、少女だったのかと、ひとりごちた。

そんな7月のある日。

あの日に見た同じ出で立ちで歩くひとは、

少年でもなく、少女でもなく。

「あ。」

俺の発した言葉に、
化粧っ気のない、彫刻のような日に焼けた素顔で、

チラッとこちらを見た眼鏡越しの瞳は、

美しい顔を縁取る漆黒の髪や、

目を閉じて会釈した時に見た濃く長く黒い睫毛が、

一際、際立たせて琥珀色に輝き、意志の強さを感じさせる。

愛想笑いをするでもなく、真顔で横を通り過ぎる彼女。

その美しい横顔に、肢体に、息を飲む。
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