恋愛事案は内密に
「派遣社員で正規の社員じゃないから、適当に仕事してるんでしょ」

所長は眉をひそめ、目が鋭くなり、口を開きかけた瞬間、事務室のドアが開いた。

「あきれた。廊下に丸聞こえ。高清水さん、それはいいすぎでしょ」

「副所長」

北野さんは事務室に入ると、自身の机にカバンをおろした。

「誰だってエラーミスすることだってあるでしょ。それに二重にチェックしなくちゃいけない、このシステム自体に問題があるんだから」

浮かれてた。

完全に。

ちゃんと仕事モードに切り替えてやらなかったのは自分のミスだ。

「麻衣ちゃんもカリカリしないでむつみちゃんをサポートしないと。将来、本社に行きたいんでしょう。フォローするスキルも大事よ」

「……言い過ぎました。ごめんなさい」

高清水さんは小さくうつむいた。

「むつみさんは就業時間が過ぎてしまっているので、今日はあがってください」

「お疲れ……様でした」

勤務表を所長に手渡し、確認印を押してくれた。

重々しい中、退社するのはしのびなかった。

派遣と正規の社員との溝は埋まらないんだろうか。

制服を脱ぎ、自分の服に着替えてようやく肩の荷が少しだけ軽くなった。

でもやっぱりまだ肩に荷物がのっかっている感じがする。
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