恋愛事案は内密に
昼休みに要項をチェックする。

電話応対研修という、一日がかりの研修で、午前中は講師によるレクチャー、お昼をはさんで午後からは電話応対コンクールになっていた。

電話応対をきっちり教えてもらえるプログラムになっていて、日頃の電話応対に不安を覚えていた私にとってこの研修はありがたい。

全国の営業所の人達が一堂に集まる電話応対研修はどういったものになるのだろう。

まだ行ってもいないのに緊張してしまった。

新入社員のときは嫌でも電話に対応できるようにしていたものだ。

まるでカルタ取りのように、新入社員は電話が鳴るたびに我先に受話機を取っていた。

場数を踏んではいたものの、イレギュラーな問題が発生したりして先輩や上司によく怒られた。

新入社員と今の私はあまり変わってないな、と心の中で苦笑する。

午後からは発注の件数が少ないこともあって、高清水さんにチェックをお願いして仕事を進めることができた。

ほっとして定時の5時になり、高清水さんに確認印を押してもらった。

「……別に電話応対研修、難しくないですから」

勤務表を渡したときに高清水さんはぽつりと言葉を交わした。

目は合わせなかったけれど、少し照れた表情をしていた。
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