恋愛事案は内密に
「高清水さん」

「……なんですか?」

トートバックを腕にぶらさげながら、高清水さんは目を丸くしている。

「北野さん、てお付き合いしてる方っているんですかね。今日、何だか違う感じがして」

冗談ぽく言ってみたけれど、やっぱり高清水さんは通用しない。

ふう、と大きくため息をもらした。

「あんまりプライベートを干渉するのもどうかと思いますが」

「そう、ですよね」

「それではいってきます」

「いってらっしゃい……」

乾いた音を立てて事務室のドアが閉められた。

余計なこと詮索するなってわかっていても気になってしまう。

以前いた会社でも、浮ついた話はかっこうの飯のタネというか、午後のおやつの時間のネタだった。

きっと別の課でも私と大和の話が出ていただろうけれど。

それでも一緒にいた同期の子は無事に社内恋愛をまっとうし、結婚したんだからさすがだな、と私含め、社内中の女子社員が尊敬の目でみていたっけ。
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