恋愛事案は内密に
「僕が見つけていなかったら、むつみさん自身、どうなってたか想像しなかったんですか」

「それは」

「魔が差したなんて、のんきなこと、言ってられないんですよ。わかりますか? 所長の管理状態に問題があるので僕の責任になりますが。ファイルを外に出さなかったことで、このことは厳重注意としておきます」

「……申し訳ありませんでした」

ただ謝るだけしかできない。

いい歳して私は何をやってるんだろう。

キスの熱が冷めつつある今、現実に戻された虚無感が襲う。

大和の言葉の熱で浮かされて行動してしまった自分がなさけない。

「あと、これは上司として知らなくてはならない事項です。どうしてこの部屋に入ったのか、報告してください。社外秘マークのファイルを取り出そうとした罰です。後でじっくり聴かせてもらいますよ」

「……わかりました」

そういうと、私の背中を抱き、所長はまた唇を私の唇に強くおしつけた。

バカなマネをしたことに対して乗り越えることができるのなら、所長から受けるキスで終わりにしてくれるのだろうか。

まだ微量に残っている大和の想いを押し流してくれるなら。
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