恋愛事案は内密に
思いきって告白したい。

そんな気持ちで北野さんをホテルのバーに誘った。

「めずらしいわね。いつも誘うほうなのに」

「……はい」

薄暗い照明にぼんやりと映る北野さんの顔はきれいだった。

「北野さん、僕」

「一杯ごちそうになったら帰るから」

「えっ」

「これから約束が入ってるの」

「それって」

「想像通り、駒形さんよ」

告白しようと思っていたのに、言葉が出てこない。

「叶えちゃいけない恋だってわかってるんだけどね。向こうは別居してるけど」

そういうと、髪の毛を耳にかけ、にこりと笑った。

「いつか罰を受けるってわかってるけど、目の前の幸せでわからなくなるの」

こんなにまっすぐでしっかりしているのに、どうしてそんな。

「どうして。僕、北野さんのこと」

「もったいないわ。五十嵐くんと付き合うだなんて」

店員が来て、テーブルに二つのカクテルを置いた。
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