恋愛事案は内密に
本社で営業戦略会議が開かれた。

といっても濱横と本社だけの個別の集まりだった。

メンバーは営業部長の駒形さん、本社営業の栗林さん、濱横からは北野さん、僕だった。

「そういえば、ライバル社が東日本に進出らしいな」

「そのような話ですね」

栗林さんが苦い顔を浮かべながら話をした。

「何でもいいから情報をそろえてほしい。以上だ」

他には既存の会社への営業活動の報告や今後の営業の仕方を離し合い、会議は終了した。

会議室から出て、ロビーの椅子に腰かけていたとき、駒形さんが声をかけてきた。

「どうだ。所長になってから」

「北野さんのサポートのおかげです」

「そうだな。あいつは努力してる。でも、五十嵐には期待しているから」

期待するなら北野さんをあきらめて、なんていう言葉が喉から出そうになったけれど。

「濱横が1人欠員になっているんだよな」

「はい」

「1名補充で。人事に言っておく」

「わかりました」

駒形さんはいつも物事がさばけている。だから惹かれたのかもしれない、北野さんが。

そういうと、駒形さんは外へ出ていってしまった。

「よお、所長さん」

「栗林さん」

茶化すように後ろから栗林さんに肩を叩かれた。

「なんですかっ」

「北野さんにアタックしたの?」

「は? 何でですか」

「図星か。だから会議中、北野さんに話しかけられたとき、あんなにしょぼくれてたか」

「……バレてるならいいです」

「しょうがないよ。ライバルがあの人じゃ」

「栗林さんはいいんですか?」

「自分は大丈夫。ラブラブなもので」

そういうと栗林さんは軽く笑いのけた。
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