恋愛事案は内密に
高清水さんはさらに見積書をつきつけた。

「見積書の数字でOK出てるのに、発注書の数字と違ってますよね。どうなんですか?」

「ご、ごめんなさい」

私は頭を下げた。

手にじっとりと汗がにじむ。

ゆっくりと顔をあげ、所長の様子をみる。

所長はしばらく二つの用紙を見比べていると、しまったとつぶやいた。

「うわあ、これ、僕の字だ。しっかり書かなかったのが悪かったですね。で、もう本社には注文書送っちゃいました?」

「そうみたいです」

「そうですか。じゃあ、ちょっと待っててください」

そういうと目の前の受話機をあげると、登録ボタンを押した。

「あ、もしもし、総務課ですか。濱横営業所の五十嵐です。お疲れ様です。高砂さんいらっしゃいますか?」

五十嵐さんは黙り、耳からこぼれる保留音のオルゴールが聞こえてきた。
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