あの頃の君へ
ふぅ、危ない危ない。
拓真が日本にいた時から散々そういう事に対して疎いことを馬鹿にされてたけど、さすがにこの年でね……
全く何も無かった訳じゃない。
誘われたりもあったけど、自分の中で何かが違う気がして結局何も起こらずじまい。
なんて拓真にバレたらまたあの悪夢の日々が……
「ちょっと待ってよ。今ドキドキしたでしょ?俺に」
「そ!そんなわけっ……」
お風呂場に向かう足を止めて、振り返ると突然身動きが取れなくなった。
え?
何これ………
「心臓爆発しそうだけど?」
耳元を掠める拓真の甘い声。
その声と同時に背中に回された腕に力が込められる。
「……っ離して!馬鹿!からかうな!」
拓真の肩を思いっきり押して、お風呂場へと駆け込む。
そしてそのままドアにもたれて座り込んで、頬に手をあてた。
「……ばか」
案の定、頬は熱を持っていて赤く染まっているのは一目瞭然だ。
当たり前だけど4年という月日で、ただ可愛かった拓真は大人になっている。
さっきの腕とか、表情とか……
「もう、やだ……」
こうして私の悩める日々は始まったのだった。