あの頃の君へ
「森下、落ち着けって」
「だって拓真くん、あの時---」
「森下!!!…ごめん、みのり先行っててくれ」
「へ?……あぁ、うん。わかった」
まるで傍観者のように、二人の姿を見つめていた私。
家の鍵を開けて電気も付けずに、ストンとソファーに腰を下ろす。
随分と取り乱した森下さんと、珍しく動揺していた拓真。
二人の間には私の入れない何かがある、そう思った。
いい加減、前に進まなきゃ。
そう思うのに頬に涙が伝る。
でも今ならまだ大丈夫。
私の気持ちは言ってないんだから。
……でも今だけ、今だけは。
次々と溢れ出る涙を拭って、頬をバチンと叩いた。
これで、良いんだよね?