あの頃の君へ
心が悲鳴をあげそうだったけど、茶化すように拓真の肩を叩いた。
けど拓真は私の顔を真剣に見つめて、あろうことかそのまま手を引いて私を抱き締めた。
「ちょっ!?何っ」
「俺、明日の便で帰ることになった」
「……っ、そっか。じゃあ今夜はお見送り会しないとね」
「ふは、そりゃどーも。あのさ、みのり……今までありがとう」
「拓、真……?」
何だか様子がおかしい。
拓真の顔を見ようとすると、回された腕に力が込められた。
「それと……会いに来てごめん……」
あまりに弱々しい声で呟き、私の肩口に頭を埋めた。
「ちょっと、拓真?急にどうしたの?」
すると、拓真は小さく息を吐き、パッと私から離れ、
「居候の分際でお前のプリン食った」
「……はぁ!?」
「しかも2個」
そして満面の笑みを浮かべた。
「拓真~~!帰るまでに買っておいてよ!あれ楽しみに取っておいたやつなんだからね!」
そして私が拓真の頭をグリグリして、二人して笑いあった。
この時本当は気付いていたのに、何も言ってあげなかった。
拓真は俺は弱虫だって、あの時言ったけど本当の弱虫は私の方なんだよ---