あの頃の君へ
少しして離れると、頬に優しく手が添えられ俯いていた顔を上げられた。
「俺さ、たぶん諦めてた」
「……」
「俺の世界には色がなかったんだ。こっち来てから嬉しいとか悲しいとか……そういうの感じなかった……」
「うん……」
「でも久々にみのりに会って、“生きたい”って思えたんだ。
治る確信が無いから言わなかっただけで、俺はずっとみのりに救われてたんだよ。
ありがとな……」
「そんな……っ、その言葉は終わってから言って……必ずだからね!私ずっと、ずっと、ずっと待ってるから」
でも拓真は答えることなく、微笑むだけ。
「拓真っ……」
言葉にしてよ……
いつもみたいに“当たり前だろ”って……
それから泣き疲れてしまい、拓真にもたれながら、眠りに落ちる寸前言ってくれた言葉……
“みのり…………”
ちゃんと聞こえてたんだからね?