世界でいちばん、大キライ。
「メールの件は麻美ちゃんから聞きましたけど……! 週末も麻美ちゃんが大変だったのもわかりますけど! だけど、今さら……! メールでも電話でもできたんじゃないですか?!」

感情がどうしても昂ぶってしまっている桃花は、薄らと瞳を潤ませる。
それでも、表情は弱々しいものではなく、キッと久志を射るよう視線を突きつけた。

しかし、久志はそんな桃花の鋭い言葉と目線に少しも動揺しない。

「電話とかメールとかじゃうまく表現できる気がしなかったから。それに、他にも白黒つけることやってから、会いたかった」

それは今までの久志からは想像できないもので、桃花の方がしっかりと立っている彼に対して狼狽してしまう。

(……ズルイ。『会いたかった』だなんて言われたら、なにも言えなくなるじゃない)

きゅっと小さな唇を噛んで、軽く眉を寄せながら久志を意味ありげに見上げる。
すると、桃花ではなく、その奥に立つジョシュアが応戦した。

「カノジョの将来(意志)をムシするの?」

まるで、試すような瞳を久志に向けながら言うジョシュアは、桃花と違って眉ひとつ動かさない。

その問いに久志が口を噤んだまま。それは自分のエゴしか理由にないのだろうと解釈する。ジョシュアにとっては、エゴだとしても、それを押し通すくらいの熱意すらも持っていないのか、と失笑するような反応そのもので。

鼻で笑うように、久志を蔑むような思いを瞳に映し、小馬鹿にしたように英語を口にした。

「Your feeling is just that level?(君の気持ちはその程度?)」

大袈裟に両肩を上げ、目を大きくしながら笑って言うジョシュアだったが、そんな扱いをされている久志は青筋を立てることもなく、至って冷静な顔つきだ。

普通、こんなふうに試されるような言葉を吐かれ、嘲笑われるような態度を取られたなら、怒りを露わにするか、自分の弱さから顔を逸らし、逃げるか。

そのどちらかのようなものなのに、久志はそうしなかった。
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