世界でいちばん、大キライ。
『はい』
「あ。こんばんは。カフェ・ソッジョルノです」
『ああ、ちょっと待って』
スピーカー越しに会話をし、桃花は商品の受け渡しの準備をしながらドアが開けられるのを待つ。
程なくそのドアが開いて、注文主が姿を見せた。
体型は痩せ型で、長めの黒髪を無造作に後ろで縛っている。見たところ20代後半といった感じのその男のことは、桃花も知ってはいた。
「お待たせ致しました。ご注文のお品は、ホットサンドとキリマンジャロですね。お会計900円です」
桃花が商品を丁重に男に渡すと、その男はスッと千円札を差し出す。それを受け取り、手早くおつりの100円を差し出した瞬間だった。
「ひゃ……っ!」
男はお金を受け取るフリをして、そのまま桃花の手首を突然掴んだ。
想像もしてなかった展開に、桃花は頭が真っ白になる。
ただ、このまま部屋に入っては危ない――。
そう無意識に体が反応して、もう片方の手が商品を入れていたカバンを落とし、黒い扉へと食らいつく。
「……なんにもしないって!ちょっとコーヒー飲むの付き合ってよ」
「えっ!」
「葉月さんでしょ?いつも奥にいるから、少し話してみたかったんだよね」
白く細い手でも、男の手。
予想以上に力強いその手に、いくらニコッと笑顔を作られても、桃花の表情は一層強張る。
「いえ、あの。困ります」
「あー。仕事中だもんねぇ?じゃあ、連絡先教えてよ。そしたら今日は諦めるかな」
(「今日は」ってなに!なんでちょっと上から目線なの?!)
桃花が頭で言い返せても、さすがに本当に口には出来ずにいたときだった。
「あ。こんばんは。カフェ・ソッジョルノです」
『ああ、ちょっと待って』
スピーカー越しに会話をし、桃花は商品の受け渡しの準備をしながらドアが開けられるのを待つ。
程なくそのドアが開いて、注文主が姿を見せた。
体型は痩せ型で、長めの黒髪を無造作に後ろで縛っている。見たところ20代後半といった感じのその男のことは、桃花も知ってはいた。
「お待たせ致しました。ご注文のお品は、ホットサンドとキリマンジャロですね。お会計900円です」
桃花が商品を丁重に男に渡すと、その男はスッと千円札を差し出す。それを受け取り、手早くおつりの100円を差し出した瞬間だった。
「ひゃ……っ!」
男はお金を受け取るフリをして、そのまま桃花の手首を突然掴んだ。
想像もしてなかった展開に、桃花は頭が真っ白になる。
ただ、このまま部屋に入っては危ない――。
そう無意識に体が反応して、もう片方の手が商品を入れていたカバンを落とし、黒い扉へと食らいつく。
「……なんにもしないって!ちょっとコーヒー飲むの付き合ってよ」
「えっ!」
「葉月さんでしょ?いつも奥にいるから、少し話してみたかったんだよね」
白く細い手でも、男の手。
予想以上に力強いその手に、いくらニコッと笑顔を作られても、桃花の表情は一層強張る。
「いえ、あの。困ります」
「あー。仕事中だもんねぇ?じゃあ、連絡先教えてよ。そしたら今日は諦めるかな」
(「今日は」ってなに!なんでちょっと上から目線なの?!)
桃花が頭で言い返せても、さすがに本当に口には出来ずにいたときだった。