櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
◆
白い扉をノックして開ける。
音を立てずに静かに開く。
「ジンノさん!」
中から、音量を抑えた声でオーリングが応える。
彼の傍には、真っ白で清潔なシーツの引かれたベッドが。
そしてそれに横たわるのは、固く瞼を閉じたままのルミ。
「......容体は?」
そう聞くとオーリングは、無言で静かに首を横ふる。
「...あれから、もう3日経つのに......」
優しく彼女の頭を撫でながら、心配げに呟いた。
ジンノも傍へ近寄り、サングラスを外す。
「俺のせいだ......」
「...何のことだ?」
頭を抱えるオーリングに、ジンノが尋ねる。
「それは...」
唇を噛みしめ、押し黙るオーリング。
怪訝な表情でそれを見つめていた。
その時。
背後になにかの気配がした。
バッ、とジンノは振り返る。
するとそこには
「エンマっ!?何故ここにいる!?」
「お久し振りでございます、ジンノ様」
エンマが静かに佇んでいた。
ジンノの声に反射して、オーリングも振り返り、突然現れたエンマの姿に目を見開く。
「お前っ!?」
本来、エンマの存在は誰にも知られてはならない。そうオーリングにもきつく言われ続けていた。
ルミの病室には色んな人間が見舞いに来る。
現にジンノだって......。
(..................ん??)
今、名前、呼ばなかったか??
『エンマっ!?何故ここにいる!?』
『お久し振りでございます、ジンノ様』
呼んでた。
確かに、呼んでた。