櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
「やはり、間違いないようだな」
「ええ。ノアも同じ意見でございます」
ジンノとエンマはそう言って頷き合う。
オーリングもここまでの話を聞いて、信じるしかなくなってきた。
もし、ルミが本当にジンノの妹のルミア・プリーストンであるなら一度目の国王襲撃事件で魔法を使い、守ったと言う話も納得がいく。
ルミアが使えた魔法に氷属性があったと言っていたのだから。
しかし
「だったら、家紋認証を行えばいいんじゃないですか?」
その言葉にジンノが反応する。
《家紋認証》
この世界に生きる人は皆、生まれてすぐに、額に魔法で家紋が刻まれる。
家紋はどんな家庭であれ必ず持たなければならない戸籍みたいな役割もする。
この魔法は、魔法使いでなくても使えるように、その為だけの魔導具が存在する。
血縁者同士のみが使え、家紋認証魔法をかけると、普段は表れない家紋が浮かぶのだ。
フェルダン王国の王都正門の関所では、必ずこれが行われる。
本当にルミが以前ここに居た人であれば、額にプリーストン家の家紋が浮かぶはず。
「......やった事はなかったのか?」
ジンノはもう既にやったと思っていたのだろう。
「王都に入るときには、別の世界から来たと言っていたから、家紋認証なんてさせてないよ!
家紋がないことが分かったら入ることも出来ないからさあ......」
家紋が無いものは、犯罪に手を染めたりして剥奪になった者である事が多い為、警戒して王都には入ることができない。
それもそうか、とジンノは立ち上がりルミの額の上に手を広げた。
オーリングとエンマがごくりと固唾を呑んで見守る。
「......我に汝の真実を示せ......
《テクネ》」
オーリングの掌が淡く光り出す。
しかし彼女の額には何も映らない。
はぁ、とオーリングはエンマは肩を落とした。
ジンノはじっと自分の掌を眺める。
だが、これで家紋が表れれば証明になるはずだ。
3人は考えた。
どうして家紋が表れなかったのか、どうやったら表れるのか。
「............」
そうしている内に、あっという間に時間は過ぎていった。
そして
ジンノの中に、一つの考えが浮かんだ。