櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
Ⅸ*白亜の女神と真実
***
ああ、また
(暗い場所......)
これで三度目
先の見えない真っ暗闇
ルミはその中でぼんやりと立っていた
(ん.........??)
いつまでそんな風にしていたのだろう
ふと、目の前に何かが見えた気がした
それは
小さな小さな、一筋の光
ルミはそれに向かって走り始める
少しずつその光は大きくなる
ようやくここから抜けられる
安心感に近いそれに、笑顔が浮かぶ
(はぁ、はぁっ、)
そして遂に
その光が手に届く
その時だった
───────ルミ
(ーーーっ! 何!?)
突然頭の中に響く声
ああ、これもまた
これで何度目か
最近はなくなっていたのに
───────ルミ
何? 一体何なの??
───────もう、時間がない
え?
───────時間が無いんだ、ルミ
何が言いたいの?
───────全てが動き出してしまう
まるで言っている意味が分からない
私に何をしろというのだろう
───────早く、私の元へ
急かすように切羽詰まった声で訴える
───────私は《白亜の女神》
過去に何度も聞いたことがあるこの台詞
白亜の女神って何?
分からない
あなたの姿を見せてよ
ルミは叫んだ
頭に響く声に訴えるように
その瞬間
目の前の光が変化し始めた
徐々に光が弱まり
ゆるゆると形を表し始める
その姿を目にした途端
ルミははっと息を呑んだ
そこに居たのは......
「わたし......?」
目の前に自分がいた
正確には、自分によく似た人
背も少しだけ高く
顔は自分よりもハッキリとし
体つきも今のルミより女性らしい
自分を幾らか成長させたようなそんな女性が目の前に居るのだ
───────そうだ
───────私は、お前
───────そして、お前は、私
目の前の自分が、一歩ルミに近づく
ルミはそれに合わせて一歩後ずさる
───────早く、私の元へ
力強い濃紺の瞳がルミを射抜くように見つめる
───────《白亜の女神》の元へ
その声と共に
ルミは、目の前の自分が放つ光に
優しく、包まれていった
───────