櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
王宮の城門を抜けると、フェルダン=ルシャ王都の町並みが視界いっぱいに広がる。
朝早くに出たので人はまばらだが、やはりノアの姿が目立ってしまい人々の視線を集めてしまう。
流石ユニコーン。
神聖視されるだけのことはある。
(...やはり目立つな...連れてきたのは間違いだったか?)
まだ本調子じゃないルミが歩かなくていいようにと思って連れてきたのだが、失敗だったかとジンノは眉をしかめる。
「......ノア、こっちへ」
小声でノアにそう伝えると、目線で方向を支持して走り出した。
そのまま裏路地へと入っていく。
「ここなら目立たんだろう...しばらくはここを通っていく」
「こんな所があったなんて...」
そこは裏路地と言っても暗く寂れた場所ではなく、上から陽の光が差し込み明るい色みのレンガが照らされたオシャレな通りだった。
所々草木の緑もあり、穏やかな風が吹き抜ける。
(気持ちいいところ......)
頬にかかる風が心地よい。
そしてそのまましばらく、ルミは裏路地散歩を楽しんだ。
───────────
(......ん?)
裏路地に入って数分がたった頃。
ふと、ノアのとなりを歩くジンノに目をやると、その胸元にきらりと輝くものがあることに気がついた。
よく見るとそれは指輪のようで、ネックレスにして首からさげている。
「それ...綺麗ですね」
「え?」
「あっ、いや、あの...その指輪...」
思わず思ったことを口に出してしまったルミは、不思議な顔をして自分を見つめるジンノに気がつき、大慌てて弁解する。
「ああ、これね......」
指で引っ掛けるようにして持ち上げたそれは、美しい装飾が施され中央にルビーのような赤い宝石があしらわれた綺麗なものだった。
装飾は黒い鋼のようなもので作られているようで陽の光を反射してわずかに光る。
(......あれ? これ、シェイラさんのイヤリングと似てる...?)
イヤリングの方には装飾はなく、この指輪のような繊細さはなかったものの、この黒光りしたものは何だか似ているように感じた。
「これはな、俺の...一番大切な人からの贈り物だ」
「へぇ」
そんな特別なものなのかと感心して目を丸くしていると、ジンノはそんなルミを見つめ、
「............何か、思い出さないか?」
と、尋ねた。