櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
(白亜の女神...この世界に来る前、今じゃすごく前に感じるけど...そこでも辰巳さんにそう呼ばれてた)
夢の名でも、そしてジンノの父親からも。
視線をジンノから女神像にうつし、もう一度見上げる。
瞼が閉じられた自分そっくりのその顔を。
(......どういう事なんだろう...ねえ、教えてよ...言われた通り来たんだよ、あなたの所に)
そして、答えを求めるように心の中でそう尋ねたのだ。
まさか目の前のそれが返事を返してくるなんて夢にも思わずに。
「っ...!」
ルミは息をのんだ。
なぜなら、白亜の女神の閉じられた瞼がゆっくりと開き、その大きな瞳がルミの目をとらえたのだから。
───────やっと、来た
────────待っていた...ルミ
頭の中に突如として流れ込む、夢の中で何度も耳にした声。
それが頭の中を支配する。
「ルミアッ!!!」
ジンノが叫んだその瞬間、ルミは白い光に包まれてしまっていた。
彼の叫び声だけが、むなしく、ルミが消えたその空間に消えていった────